いよいよ本格化する Internet of Things 「モノのインターネット」時代に求められるネットワークインフラのあるべき姿とは

クラウドからフォグコンピューティングへ
カナメになるのはFANのインテリジェンス

 それでは具体的に、どのようなネットワーク アーキテクチャが必要になるのか。シスコが提唱するIoT ハイレベル アーキテクチャを以下の図に示す。

Cisco IoTハイレベル・アーキテクチャ

 このアーキテクチャは、大きく4つのレイヤで構成されている。データセンター/クラウド、コアネットワーク、フィールド エリア ネットワーク(Field Area Network: FAN)、そしてスマート シングス ネットワーク(Smart Things Network: STN)である。

 「モノ」をネットワークに参加させるのはSTNレイヤである。従来は、独自プロトコルやIPへプロトコル変換するゲートウェイ装置が使われてきたが、ネットワークの末端までシームレスなQoSやSLAを提供する事が困難だったり、ゲートウェイ装置のセキュリティーリスクや故障時の影響を考慮しなければならない等、運用面・管理面・コスト面で潜在的課題があった。末端のデバイスまでエンド-ツー-エンドでIP化すれば、これらの課題を解決する事が可能である。そのためにはそれぞれの「モノ」に、IPネットワーク機能を搭載する必要がある。このようなIPによる通信機能を持つスマートな「モノ」を「IPスマートオブジェクト」という。プロトコルスタックは軽量で、低消費電力で動作することが求められる。また、劣悪な通信環境下でも確実に情報を伝達する為の仕組みや、ゼロタッチで設定できることも必要だ。以下に、プロトコルスタックの構成例を示す。

プロトコルスタックの構成例

 IPスマートオブジェクトで生成された情報は、デバイスに近いネットワークであるFANに渡され、ここを介して上位レイヤであるコアネットワークやデータセンターへと吸い上げられていく。データ処理の結果もやはりFANを介して、必要に応じてIPスマートオブジェクトへとフィードバックされる。ただし注意しなければならないのは、FANが従来のディストリビューションレイヤのように、仲介役を果たすだけでは十分ではないということだ。

 まず第1に、上位レイヤを代替できる分散インテリジェンス(Distributed Intelligence)が求められる。IoTの世界で利用されるアプリケーションは、レスポンス時間にシビアなものが多くなると予測される。そのため全てのデータを上位レイヤに渡して処理するのでは、間に合わないケースが出てくるのだ。ニーズによってはFAN内部でデータ処理を行うことも必要になる。

 第2に「Coupling of Object」という機能が求められる。IPスマートオブジェクトが生成するデータの中には、個々のデータのレベルでは意味をなさないものが少なくない。例えば気象センサが生成するデータと、位置情報を組み合わせることで、現在地からどのくらい離れた地点で今雷雨が発生しており、あと何分で雨が降り出すといった、新たな意味を生み出すことができる。このような様々なデータの収集・蓄積・分析がCoupling of Objectであり、これもFANのインテリジェンスとして組み込んでいく必要がある。

 第3に末端のデバイス接続や制御の機能も求められる。デバイス数が莫大なものになると、個々のデバイスに対する回線をSTNレイヤで確保するのはコストがかかる。できるだけFANレイヤにこの機能を取り込み、STNレイヤを軽量化することも求められるのだ。

 これらの要件を全てカバーしたFANレイヤを含む環境を、シスコではフォグコンピューティング(FOG Computing)と呼んでいる。これはクラウドコンピューティングを拡張した概念であり、クラウドよりも「地面に近い場所」にサービスやアプリケーションが存在するイメージだ。

 フォグコンピューティングを構成するフォグノードは、それぞれコンピューティング、ストレージ、ネットワーク機能を実装している。各フォグノードはIPスマートオブジェクトを収容し、上位レイヤや隣のフォグノードとやり取りしながら、必要なサービスやアプリケーションを提供する。

 IoT時代のネットワークサービスは、このような「分散型インテリジェンス」が前提となるのである。

いよいよ本格化する Internet of Things